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「平均240ヤード」の球を、あなたは一度も打っていない

「平均240ヤード」の球を、あなたは一度も打っていない

こんにちは、中上級者向け飛距離アップ専門コーチ
ぶっ飛び力学研究所の山崎壱鉱です。

1950年、アメリカ空軍は困っていました。事故が多すぎる。

誰にも合わないコックピット

原因を探すうち、コックピットの設計が疑われました。当時の操縦席は、1920年代に測った「平均的なパイロットの体」に合わせて作られていました。座席の高さ、ペダルの距離、計器までの手の長さ。すべて平均。合理的に見えます。

そこで空軍は、4,000人規模のパイロットを実際に測り直しました。身長、胸囲、腕の長さ、股下——10項目。そして、全10項目が「平均のまんなか付近」に収まるパイロットが何人いるかを数えました。

ゼロ人でした。

一人もいなかった。平均の胸囲を持つ人は平均の腕の長さを持っていないし、平均の身長の人は平均の股下ではない。空軍が30年間、設計の基準にしてきた「平均的なパイロット」という人間は、実在しなかったのです。

空軍の結論は劇的でした。平均に合わせるのをやめ、座席とペダルを可動式にした。事故は減りました。

あなたも「平均の自分」に合わせて設計している

ここからが本題です。

ゴルファーは、自分を平均で語ります。

「ドライバーは240ヤードくらい」
「ちょっと右に出る持ち球です」
「7番で150ヤード」

全部、平均の話です。そしてその平均ぴったりの球を、あなたは今シーズン一度も打っていない。240と言う人の実体は、225が出て、255が出て、たまに200が出る集団です。平均240という一発は、ほぼ存在しません。

にもかかわらず、コースでの判断はその架空の一発を基準に下されます。「ここは240だから届く」。届くのは平均の自分です。ティーに立っているのは、平均ではないあなたです。

空軍と同じ間違いを、毎ホールやっている。

管理するのは平均ではなく「幅」

では何を基準にするか。ばらつきの幅です。統計の言葉では標準偏差、シグマ。

着弾点は、きれいな山の形(正規分布)に散らばります。この山には便利な性質があります。

  • ±1シグマの帯に、約68%が入る
  • ±2シグマの帯に、約95%が入る
  • 片側だけ見れば、2シグマを越える球は約2%
標準偏差が20ヤードの人は、球がどこに散るか。±1シグマに約68%、±2シグマに約95%が入り、2シグマの外側は片側約2%

つまり、自分のシグマが分かれば、「絶対に入れてはいけない側」に何%入るかを事前に計算できる。

ドライバーの左右のブレが、標準偏差で20ヤードだとします。右に池があるなら、池のラインから40ヤード(2シグマ分)左をターゲットにする。これで右の池に入る確率は約2%まで落ちます。30ヤードしか取らなければ、約7%。10ホールに1回近く入ります。

同じ標準偏差20ヤードでも、ハザードから40ヤード取れば池に入る確率は約2%、30ヤードしか取らなければ約7%に増える

この差は技術ではありません。計算をしたかどうかの差です。

ひとつ注意。よく「2シグマ=40ヤードが95%の幅」と書かれますが、正確には95%が入るのは±40ヤード、つまり80ヤード幅の帯です。狙いを決めるときに使うのは、その片側の40ヤード。ここを混同すると、安全なつもりで確率を倍に見誤ります。

打ち下ろしや向かい風では滞空時間が伸び、風にさらされる時間が増えるので、シグマは1〜2割ほど大きく見積もってください。

なぜプロは、狭いホールでドライバーを抜かないのか

もうひとつ、データが常識をひっくり返した例があります。

近年のPGAツアーでは、狭いホールでも3Wにせずドライバーを強振する選手が増えました。乱暴に見えますが、これは計算です。

ストロークス・ゲインド系の解析では、「3Wでフェアウェイキープ率70%」と「ドライバーでキープ率40%」のスコア期待値が、ほぼ同等になるという結果が出ています。半分以上ラフに入っても、前に進んだ分の得が、ラフの損を打ち消してしまう。

ここが、ぶっ飛び力学として一番言いたいところです。

飛距離は、攻めるための贅沢品ではありません。確率を買うための通貨です。

20ヤード余分に飛ぶ人は、同じシグマでもより有利なアングルを選べる。逆に飛ばない人は、安全なラインしか選べないので、選択肢そのものが減る。飛距離がないことの本当の代償は、2打目の距離ではなく、意思決定の自由の喪失です。

シグマを決めているのは、手先ではない

ではどうやってシグマを狭めるか。ここで多くの人が、手先の調整に走ります。フェースを合わせにいく、当て勘を磨く。

違います。

ばらつきの幅は、再現性の指標です。毎回同じ順番でエネルギーを伝えられているかどうか。地面を踏む→体幹が回る→腕が走る→ヘッドが最速になる。この順番が毎回同じなら、出てくる球も毎回同じ場所に集まります。順番が日によって入れ替わる人は、どれだけ丁寧に振っても山が横に広がる。

そして重要なのは、飛距離とばらつきは対立しないということ。伝達の順番が整うと、ヘッドスピードは上がり、同時にシグマは狭くなります。「飛ばそうとすると曲がる」のは、速度を上げたからではなく、速度を上げるために順番を崩したからです。

丁寧に振ってシグマを狭めるのは、ゆるい解決です。順番を揃えてシグマを狭めると、飛距離がおまけで付いてきます。

今日からやる3つ

① 自分のシグマを1回だけ測る

ドライバーで20球。左右のブレをヤードで記録して、標準偏差を出す(Excelでも電卓でもいい)。一生に一度やれば、あなたのコースマネジメントは一生変わります。

② ターゲットを「ハザードから2シグマ」で引き直す

いつも「フェアウェイ中央」と言っている人は、中央を狙う理由を計算していません。危険な側から2シグマ離れた場所が、あなたの正しい中央です。

③ 平均で喋るのをやめる

「240です」ではなく「215から255、真ん中240」と言う。自分の幅を口に出せるようになると、コースでの判断が勝手に変わります。

まとめ

空軍が強くなったのは、優秀なパイロットを集めたからではありません。平均的なパイロットは存在しないと認めて、座席を動かせるようにしたからです。

ゴルフも同じです。理想のスイングを追うのは正しい。でもスコアを動かすのは、今日の自分の幅を直視して、その幅に合わせてコースを設計し直すこと。

あなたのドライバーのシグマは、何ヤードですか。

答えられないなら、あなたは今日も「平均の自分」をコースに送り出しています。

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山崎壱鉱
山崎 壱鉱飛距離アップ専門コーチ
「ぶっ飛び力学」主宰。最先端のゴルフバイオメカニクスに基づき、科学的に飛距離を伸ばす方法を指導。平均飛距離+30ヤード。ドラコン日本チャンピオンや全米女子オープン出場プロをはじめ、多数のアマチュアを指導。キャリー230y→300y超。
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