かかとの固定をやめたら、世界記録がほぼ全部破られた

こんにちは、中上級者向け飛距離アップ専門コーチ
ぶっ飛び力学研究所の山崎壱鉱です。
スピードスケートの靴は、刃が靴底にしっかり固定されている。
100年疑われなかった「当たり前」
これは誰も疑わない前提でした。刃がグラグラしていたら滑れるわけがない。当たり前です。
ところが1990年代、オランダの大学の研究者たちが、妙なものを作りました。
刃のつま先だけを蝶番で留めて、かかとが靴から離れるようにしたスケート靴です。蹴るとパタパタ音が鳴るので、クラップスケートと呼ばれました。
当然、最初は馬鹿にされました。
1996年、オランダのあるコーチが教え子たちに使わせます。1997年には、これを履いた選手がヨーロッパ選手権で7度の王者を破りました。
そして1997-98シーズン。五輪種目の世界記録が、ほぼすべて塗り替えられました。男女とも、記録の向上はおよそ1.8〜1.9%。コンマ1秒を削り合う世界で、この数字は異常です。
なぜ速くなったのか。理由は単純でした。
かかとが固定されていると、足首を伸ばし切る前に刃が氷から離れてしまう。解放してやれば、膝と足首を最後まで伸ばしきるまで、刃は氷に乗っていられる。押している時間が、伸びたのです。
選手は何も変わっていません。固定を外しただけです。
固定していたものを解放したら、速くなった。
ゴルフでいちばん神聖な言葉
ここからが本題です。
日本のゴルフで、最も神聖視されている言葉のひとつが「タメ」です。
トップからの角度を保て。手元を先行させろ。我慢しろ。ギリギリまでほどくな。
そして近年、運動連鎖という考え方が広まって、こう考える人が増えました。
「インパクト直前で手元にブレーキをかければ、その分ヘッドが走るはずだ」
実は、データ上は、そのとおりに見えます。
データでは、確かに手元は減速している
パドレイグ・ハリントンのベストスイングを計測した数値があります。
- ハーフウェイダウンでのハンドスピードのピーク:時速22〜24マイル(約9.8〜10.7m/s)
- そこからインパクトまでに:時速4〜6マイル 減速している
手元は、確かに減速しています。データは正しい。
ところが、このデータを示した研究者マイケル・ジェイコブス氏は、こう言い切ります。
「意図的に手を減速させるドリルなどは、絶対にやってはいけない」
なぜでしょうか。
走ったから、手が止まった
手元が減速する本当の理由は、プレイヤーがブレーキをかけたからではありません。
順番は、こうです。
- クラブを早い段階から外(アウト)へ振り出すのを、許容する
- クラブが外へ動こうとする力(遠心力・慣性力)が強く働く
- その反作用として、手元が引き戻される
- 結果的に、手元が減速する
つまり、こういうことです。
手を止めたからヘッドが走るのではありません。ヘッドが走ったから、手が止まったのです。
原因と結果が、完全に逆さまに理解されています。
そして、ここが怖いところです。結果だけを直接作りにいくと、原因が消えます。
手元に自分でブレーキをかけた人は、クラブが外へ出ていないのに手だけが止まった状態になります。クラブを走らせる力が発生していないのに、減速だけが起きている。これでは飛ぶはずがありません。
「タメをキープ」は、固定されたかかとです
ぶっ飛び力学として、ここをはっきり書きます。
「タメを長くキープしよう」「手元を目標方向へ突き出し続けよう」とすればするほど、クラブは外へ解放されません。解放されないということは、エネルギーの伝達がそこで止まるということです。
クラップスケートの話を思い出してください。かかとを固定していた選手は、押し切る前に刃が離れていました。力を出し切る前に、伝達が終わっていた。
タメをキープしている人に起きているのは、まったく同じことです。
このブログで繰り返し書いてきたとおり、飛距離を決めるのは地面で作った力を、逃がさずヘッドまで届けられているかです。
その最後の出口が、クラブの解放です。ここを我慢で塞いでいる限り、手前でどれだけ力を作っても、外には出ていきません。
ヘッドスピードを最大化するカギは、タメを作ることではありません。
いかに早い段階から、クラブが外へ放り出されるのを邪魔しないか。
我慢は、美徳ではありません。
ただし、これを逆に読まないでください
ここは絶対に誤解しないでください。
「早く解放しろ」=「手でクラブを振り下ろせ」ではありません。
自分から手で放りにいく(いわゆるキャスティング)と、今度は腕だけが先に動いて、地面で作った力が届く前に順番が壊れます。力の出どころを失うという意味では、タメすぎるのと同じ失敗です。
正しいのは、邪魔をしないこと。
クラブには、外へ出ていこうとする力がもともと働いています。何もしなければ、勝手に出ていきます。タメとは、それを手で押さえつけている状態のことです。
放り出すのではなく、押さえるのをやめる。まったく別の動作です。
今日からやる3つ
① 「我慢している」場所を特定する
ダウンスイング中、自分がどこで力を入れてこらえているか。手首か、手元か、腕か。1つ挙げてください。こらえている場所が、出口を塞いでいる場所です。
② トップから、普段より早くほどいて10球
極端で構いません。「早すぎる」と感じるタイミングでほどいてみてください。当たりが薄くなるか、むしろ飛ぶか。飛ぶなら、あなたのタメは飾りでした。
③ フィニッシュまで振り切れているか見る
解放できている人は、クラブが勝手に外へ出ていくので、振り切るしかなくなります。途中で止まる、縮こまる、左ひじが引ける。これらは、どこかで押さえている証拠です。
まとめ
スケート靴の刃は、固定されているのが当たり前でした。誰も疑いませんでした。
外した瞬間、同じ選手たちが世界記録をほぼ全部塗り替えました。
ゴルフの「タメ」も、同じ立ち位置にあります。長く保つほど良いものとされ、疑われることがない。
でもデータが示しているのは、手元の減速は結果であって、原因ではないという事実です。そして結果だけを真似すると、原因のほうが消えます。
あなたがいちばん頑張ってこらえているその場所。
そこは、力を溜めている場所ですか。それとも、出口を塞いでいる場所ですか。
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