体重計の上で立ち上がると、一瞬だけ体重が増える

こんにちは、中上級者向け飛距離アップ専門コーチ
ぶっ飛び力学研究所の山崎壱鉱です。
家に体重計があったら、いますぐ試せる実験があります。
体重計が測っているもの
乗って、数字が落ち着くのを待ってください。そこから——
その場で素早くしゃがんで、勢いよく立ち上がる。
数字を見ていてください。
しゃがむ瞬間、数字は減ります。そして立ち上がる瞬間、自分の体重より大きな数字が一瞬出ます。体重60キロの人なら、70キロや80キロを指すことも珍しくありません。
一瞬で太ったわけではありません。床を押した力が、そのまま表示されているだけです。
体重計が測っているのは、重さではありません。あなたが床をどれだけ押しているかです。
(デジタル式は数値を平均化してしまうので、出にくいことがあります。表示の速い機種のほうがはっきり分かります)
つまり、こういうことです。
上へ加速するには、その分だけ余計に床を押さなければならない。
逆に言えば——床を強く押した人だけが、上へ行けます。
スイング中、あなたは階段を駆け上がっている
ここからが本題です。
ゴルフ科学の研究者マイケル・ジェイコブス氏のデータベースに、こういう記録があります。
一般的なゴルファーがスイング中に地面から受けている上向きの力は、子供の頃に階段を「1段飛ばし」で駆け上がるときの力と、ほぼ同じ。
2段を一気にジャンプして上がる、あの力です。
つまりゴルフスイングとは、本来上向きの爆発を伴う運動だということです。横回転でも、ひねりでもありません。地面を押して、上へ跳ね上がる力が、その中心にある。
ところが、です。
多くのゴルファーは、ボールを打つ瞬間に反対のことをしています。
自分を、下へ押さえつけている。
階段を駆け上がるべきところで、階段を下りようとしている。これで飛ぶほうが、おかしい。
なぜ、下へ押さえつけてしまうのか
犯人は、はっきりしています。
「前傾角度をキープしろ」
「頭を動かすな。低く保て」
日本のレッスンで、何十年も言われ続けてきた言葉です。
この2つを真面目に守るとどうなるか。
前傾を死守しようとして、地面に埋もれるように構えます。頭の高さを変えまいとして、上下動を禁じます。そして、その場でコマのようにスピンしようとする。
すると背骨は丸まったままロックされ、上へ伸びる余地がなくなります。残された選択肢は、ひとつしかありません。
腕だけを、体の周りに巻きつけること。
手打ちです。
年齢とともにスイングが小さくなり、飛距離が落ちていく——いわゆる「オールドマン・スイング」の正体が、これです。
筋力が落ちたからではありません。上へ伸びることを、自分で禁止しているからです。
トップでの胸の前傾は、マイナス5度
ここで、多くの人が驚く数値を紹介します。
3Dで計測すると、アドレスで胸郭(上部胸椎)が30度前傾している人でも、トップ・オブ・スイングでは「マイナス5度」になります。
マイナスです。つまり背骨の上部は完全に起き上がり、むしろわずかに後ろへ反っている。
「えっ、トップでは前傾しているように見えるけど」と思うはずです。そのとおりです。見た目は前傾しています。そこに体幹の捻転と、横方向の傾きが加わるため、外見上は前傾しているように見えるだけなのです。
つまり「前傾角度をキープしろ」という指示は、見た目を説明した言葉であって、中で起きていることとは違います。
その見た目を内側から再現しようとすると、背骨を丸めてロックするしかなくなる。指示どおりに動いた結果、壊れる。
コアは腹巻きではなく、リンゴの芯
では、どう動くのか。ジェイコブス氏の表現が秀逸です。
体のコアとは、お腹周り(腹巻きの位置)ではありません。足の裏から頭のてっぺんまでを貫く、1本の芯です。リンゴの芯のようなもの。
肩や腕という表面の果肉だけを横に回すのではなく、足裏から頭頂部までの軸全体をねじり上げる。
そしてバックスイングの方向は、低く留まることではありません。
「上」かつ「後ろ」です。
昔の芝刈り機のスターターロープを、自分の真後ろかつ上へ引き上げるように。右の骨盤を高くしながら、背骨を伸ばしていく。
伸ばすから、大きな捻転と可動域が生まれます。縮こまった背骨は、回りません。
ぶっ飛び力学として、ここを言い切ります
このブログで繰り返し書いてきたとおり、飛距離を決めるのは地面をどう使い、その力をどう逃がさず届けるかです。
今日の話で、その「地面の使い方」がひとつ具体的になります。
地面反力は、踏む力の大きさとしてではなく、「上へ伸びる動き」として現れます。
体重計の実験を思い出してください。床を強く押した人だけが、上へ行けました。逆も真です。上へ行かない人は、床を強く押せていません。
「前傾キープ」「頭を低く」を守っている人は、上へ行く出口を自分で塞いでいます。出口がないので、床を強く押す意味がなくなる。だから押さなくなる。だから飛ばなくなる。
オールドマン・スイングは、加齢ではなく、指示の副作用です。
ただし、これを逆に読まないでください
重要な注意です。
「上へ伸びろ」=「インパクトで体を起こせ」ではありません。
インパクトで起き上がる動きは、たいてい窮屈になった結果の代償動作です。スペースが足りなくなって、やむを得ず逃げている。あれとは別物です。
違いは、順番にあります。
- 正しい伸び:バックスイングで上へ伸び、地面を押して、その力が上向きに返ってくる
- 代償の伸び:ダウンスイングで詰まって、苦しくなって起き上がる
起き上がるタイミングではなく、伸びる方向と順番が問題です。形だけ真似すると、ただの伸び上がりになります。
今日からやる3つ
① 体重計の実験を、実際にやる
読むだけで終わらせないでください。しゃがんで立つだけです。「床を押すと、上向きの力が出る」を体で1回確認しておくと、以降の練習の意味が変わります。
② バックスイングを「上かつ後ろ」へ出してみる
低く長く引くのをやめて、右の骨盤を高くしながら上げてみてください。背が伸びる感覚が出るはずです。トップが窮屈でなくなるなら、それが正解側です。
③ 「前傾キープ」をいったん忘れて10球
禁止するわけではありません。1回外してみて、どうなるかを見るだけです。当たりが良くなるなら、あなたの前傾キープは働いていませんでした。
まとめ
体重計の数字が一瞬増えるのは、あなたが床を強く押したからです。上へ行くには、下を押すしかない。
ゴルフスイングで地面から受けている上向きの力は、階段を1段飛ばしで駆け上がるときと同じだといいます。それだけの爆発が、本来あそこで起きている。
それなのに多くの人は、打つ瞬間に自分を下へ抑え込んでいます。
飛ばなくなったのは、歳のせいでしょうか。
それとも、上へ行くことを禁じられたままだからでしょうか。
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