飛ぶ選手は「力が大きい」のではなく「力を出すのが早い」——マイケル・ブレナン選手のTPI測定から
こんにちは、ぶっ飛び力学の山崎壱鉱(いっこう)です。
PGAツアーの若手、マイケル・ブレナン選手(23歳)がTPIで測定を 受けた記録を見ました。平常運転のヘッドスピードが126mph。 ツアー平均が117mphですから、いま最も飛ぶ世代のひとりです。
測定内容が非常に良かったので、 アマチュアの方にも持ち帰れる部分を整理します。
▼パワーの数字は全部ツアー平均超え
まず身体能力から。
・垂直跳び 26.4インチ(ツアー平均 23インチ) ・座位・立位のメディシンボール投げ どちらも平均以上 ・握力も平均以上 ・スプリットスクワット 8回で約98〜100kg
体重を考えれば異次元の数字です。エンジンは文句なし。
ただ、ここが飛距離の本題ではありません。
▼本当の理由は「力を出すタイミング」
ヘッドスピードと最も強く結びつくのは、 総トルクと垂直方向の力です。ブレナン選手は どちらも大きく出せます。しかし彼を際立たせているのは、 大きさではなくいつ出すかでした。
彼はダウンスイングで地面を押すピークが、他のツアー選手よりは っきり早い。多くの選手はシャフトが 地面と垂直になるあたりでピークを迎えますが、彼は それよりずっと手前で押し終わっています。
こんな例え話が出てきました。
キャスター付きの椅子に座って、壁の30cm手前から 押されてもたいして痛くない。でも15m手前から助走を つけて押されたら大怪我をする。同じ力でも、加速する時間が 長いほど結果が変わる。
シャフトが垂直になった後に力のピークが来る人は、その力が ヘッドスピードに変わるための時間が足りません。飛距離の差は 「どれだけ強いか」より「どれだけ早く始められるか」で決まる部分 が大きい。ここは私が現場で一番強調している話とも重なります。
回転速度も桁が違いました。体幹のピーク回転速度は 約909度/秒(ツアー平均は約700度/秒)。 バックスイングの肩の回転は120度超(平均90度)です。
ちなみに彼はトップで腰椎が反ります。 映像だけ見ると欠陥に見える。でも伸展と回転は連動していて、 回れば回るほど反りは増えます。90度の回転なら5度が目安ですが、 120度回る人がその基準に収まるはずがない。数字は 計算上そうなるだけで、エラーではありませんでした。
形の善し悪しは、その人の回旋量とセットでしか判断できない。
これは指導していて何度も痛感します。
▼それでも本人の悩みはアイアンだった
ドライバーは完璧に近い数字。ところが本人の悩みは 「右に体重が残る」「ロングクラブで軌道が左に出る」でした。
原因はアイアンのアドレスにありました。
アドレスで、骨盤の中心がスタンスの中心に対してどこにあるか。 骨盤の中心から錘を吊るしたら、どこに落ちるか——TPIではこれを 「下げ振り」と呼んでいます。
ドライバーはアッパー軌道で打ちたいので、 スタンス中心より1〜2.5cmほど後ろ。クラブが短くなるにつれて、 これは前へずれていきます。
ブレナン選手は逆でした。アイアンのほうがドライバーより骨盤が 後ろにあり、しかもバックスイングでさらに後ろへ流れていた。
つまり「ダウンで残ってしまう」のではなく、残る場所から始めて、 さらに後ろへ動いていた。ダウンスイングの欠陥ではなく、 構えに対する当然の反応だったわけです。
修正はシンプルで、下げ振りを中心の1インチ後ろから 1インチ前に移し、そこで保つ。 「始めた場所で終えなさい」というのが処方でした。
ひとつ注意点があります。下げ振りはボール位置ではなく、 スタンス中心を基準に測ります。骨盤を前に動かせば、ボールは 体に対して相対的に後ろへ移動する。だから ボール位置も少し前へ調整が必要です。ボールが体に対して 後ろすぎると、そもそも後ろに構えるしか選択肢がなくなります。
▼14歳からデータを取り続けているチーム
測定を通して一番印象に残ったのは、実は数字そのものでは ありませんでした。出てきた結果のほとんどが、同行した チームにとって驚きではなかったことです。
トレーナーはブレナン選手が14歳の頃から身体データを取り続け、 3〜4ヶ月ごとに3Dのスイングデータを計測しています。コーチとは 12年の付き合い。
彼らは「たぶんこれが必要だろう」と推測していない。本人が 好きな練習に流されてもいない。測って、鍛えて、また測る。それを 10年繰り返してきた結果が、今のあの数字です。
フィットネスが後付けのオプションではなく、 生活そのものになっている。測定を担当した側の言葉です。
▼結果はあとからついてきた
補足すると、この測定の8ヶ月後の話があります。
彼はレギュラーシーズン最終戦を フェデックスカップ105位で迎えました。トップ10入りは 年間1回だけ。シーズンは終わりかけていた。
その週、ウィンダム選手権で優勝しています。ツアー2勝目、 プレーオフ進出、そしてマスターズへの復帰。
派手なスイング改造をしたわけではありません。構えの位置を 数センチ動かし、始めた場所から後ろへ動かない。それだけです。
▼まとめ
世界トップレベルの測定でも、結論は 「スイング改造は不要、セットアップを整えましょう」でした。
構え、アライメント、グリップ、スタンス。地味ですが、ここが 数センチずれているだけで、その先の動作がすべて変わります。 逆に言えば、動作を直そうとして直らないものの多くは、構えを 直すと勝手に消えます。
自分の数字を知り、そのうえで何を直すかを決める。 遠回りに見えて、これが一番早い道です。
▼ブログでこの記事を読む https://ikko-yamazaki.com/blog/brennan-tpi
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