© ぶっ飛び力学 / 山崎壱鉱
HOME / ブログ / ノウハウ
ノウハウ

「真っ直ぐ振れ」は、300年前に数学が否定している

「真っ直ぐ振れ」は、300年前に数学が否定している

こんにちは、中上級者向け飛距離アップ専門コーチ
ぶっ飛び力学研究所の山崎壱鉱です。

1696年、スイスの数学者ヨハン・ベルヌーイが、ヨーロッパ中の数学者に問題を出しました。

ベルヌーイの挑戦状

高い点Aから低い点Bへ、球を重力だけで転がす。最も速く到達する坂の形は何か。

多くの人が直感的に「直線だろう」と答えます。AからBへの最短距離は直線なのだから、最短なら最速のはずだ、と。

違いました。

正解はサイクロイドと呼ばれる、いったん急降下してから緩やかに上がってくる曲線です。遠回りをするのに、直線より速く着く。なぜなら、最初に急に落ちることで早い段階で速度を手に入れ、その速度が残りの全区間に効いてくるからです。

直線は、最短ではあるが、最速ではない。

この問題は当時の最高の頭脳たちを悩ませました。アイザック・ニュートンは夕方に問題を受け取り、翌朝までに解いたと伝えられています。

最短と最速は、別物である。数学はこれを300年以上前に決着させました。

ゴルフだけが、まだ決着していない

ここからが本題です。

練習場で、いまも最も多く交わされている言葉を思い出してください。

「真っ直ぐ上げて、真っ直ぐ下ろす」
「頭を動かすな」

どちらも、クラブとカラダを直線で管理しようとする指示です。そして日本のアマチュアの大半が、これを「基本」として疑っていません。

前回の記事で、群れの中で広まった意味のない行動を「草」と呼びました。この2つは、草の中でも最も深く刺さっているものです。

なぜなら、直線で振ろうとした瞬間、あなたは最短を選んで、最速を捨てているからです。

初速190マイルの若手も、同じ草を挿していた

これはアマチュア特有の問題ではありません。

シーアイランドのマスターインストラクター、ジャスティン・パーソンズ氏が公開した事例に、ブレイズ・ブラウン(Blades Brown)という若手選手が出てきます。ドライバーのボール初速が190マイル台に乗る、文字どおり規格外の飛ばし屋です。

そのブレイズが、パーソンズ氏と取り組む前、2つの思い込みを持っていました。

  • ゴルフスイングは直線運動である。真っ直ぐ上げて真っ直ぐ下ろせば、真っ直ぐ飛ぶ
  • 頭と胸はボールの真上に固定すべき。アドレスからトップまで一切右に動かない

練習場で聞く言葉と、一字一句同じです。

そしてSportsbox 3Dで計測した結果、彼のスイングには深刻なエラーが出ていました。

「頭を右に動かすまい」としながら深く捻ろうとした結果、上体のほうが目標側に傾いてしまっていた。トップで背骨が逆方向に反り返る、いわゆるリバーススパインです。そこからダウンスイングに入ると、頭も胸もさらにターゲット側へ流れ、ボールのかなり前に上体が出た状態でインパクトを迎えていました。

症状はこうです。

  • 4番アイアンで球が上がらない(上から潰しすぎている)
  • 突っ込んだぶん苦しくなって体を起こす代償動作が入る
  • ターフのトゥ側が深く刺さる、打点がトゥ寄りにブレる

ひとつ、はっきりさせておきます。彼は指示どおりに動けていたのです。「頭を動かすな」を守れなかったのではなく、守った結果がこれでした。

なぜ2Dの動画では、これが見えないのか

ここで多くの人が「自分はスマホで撮ってチェックしている」と言います。

パーソンズ氏は、2D映像は実際に起きている動きの半分しか映していないと言い切ります。

バックスイングでの右の骨盤を例にすると、実際には奥行き(前後)・高さ(上下)・回転の3つが同時に起きています。ところが——

  • 後方(ダウンザライン)から撮ると、見えるのは奥行きだけ
  • 正面(フェースオン)から撮ると、見えるのは左右の動きだけ

どちらの映像にも、立体的に何が起きているかは映っていません。そこに線を引いて「腰が引けている」「スウェイしている」と自己判断する。これが、スイング作りが迷宮入りする最大の原因です。

ブレイズのリバーススパインも、本人の感覚では「頭を動かしていない」。2Dでも、ぱっと見では分からない。3次元で測って初めて見えたエラーでした。

ぶっ飛び力学として、ここを言い切ります

なぜ直線がダメなのか。理由は単純です。

直線では、角速度が生まれないからです。

クラブヘッドが速くなるのは、円を描いて回るからです。半径があって、その周りを回るから角速度が乗る。ターゲットラインに沿ってクラブを平行移動させようとすると、加速する仕組みそのものが存在しない。

地面を踏んで力を作る。それを体幹から腕へ、腕からヘッドへ渡す——このブログで何度も書いてきた話ですが、その力が最後にスピードへ変わる場所が「円」です。円を捨てたら、せっかく地面で作った力の出口がなくなります。

「真っ直ぐ振れ」は、自分で伝達経路を塞ぐ指示なのです。

もうひとつ、パーソンズ氏がブレイズに理解させた事実があります。

人間の体は、左右対称ではありません。

右打ちなら、右手は左手より下にあります。だから右肩・右肩甲骨は、左より少し低く、少し前に出るのが自然な構造です。それが正しい形です。

ところがブレイズは「両肩を水平に」「両目をボールの真上に」にこだわっていました。

お気づきでしょうか。これは、前回書いた「平均のコックピット」と同じ話です。左右対称で、肩が水平で、目がボールの真上にある人間——そんな体は存在しません。存在しない体の形を目標にすれば、どこかに必ず無理が出ます。彼の場合、それがリバーススパインでした。

今日からやる3つ

① 「頭を動かすな」と言われた理由を言えるか

前回と同じ問いです。「そう習ったから」しか出てこないなら、それは草です。ちなみにこの指示の本来の目的は軸の安定であって、頭の固定ではありません。目的と手段がすり替わっています。

② ターフを見る

ロングアイアンで球が上がらない、トゥ側のターフが深い、打点がトゥにブレる。この3つが揃っていたら、突っ込みを疑ってください。ブレイズとまったく同じ症状です。

③ 上から見る

これがいちばん効きます。2方向から撮るのをやめて、真上からの視点を手に入れてください。突っ込みも、軸の傾きも、上から見ると一発で分かります。

ここで注意がひとつ。パーソンズ氏がTPIのグレッグ・ローズ博士の教えとして挙げているのですが、一度にたくさんの数値を追いかけてはいけません。まず1つの指標(胸のスウェイだけ、骨盤の回転だけ)に絞り、それを自分の感覚と一致させてから次に進む。これが鉄則です。

まとめ

1696年の問題の答えは、サイクロイドでした。遠回りに見える曲線が、直線より速く着く。

ゴルフで起きていることは、まったく同じです。真っ直ぐ上げて真っ直ぐ下ろせば、最短距離は手に入ります。でもそれは、最速ではありません。

ベルヌーイの問題に「直線だろう」と答えた当時の人々を、私たちは笑えません。300年後の練習場で、まだ同じ答えを出し続けているのですから。

あなたのクラブは今日、円を描いていますか。それとも、最短距離を通っていますか。

\ 無料・メールアドレスだけ /

飛距離アップのヒントを、あなたのメールへ。

飛距離が伸びない原因と、練習の考え方。計測データと指導の現場からお届けします。

無料でメルマガを受け取るいつでも配信解除できます無料の「新・飛距離ポテンシャル診断」はこちら →
山崎壱鉱
山崎 壱鉱飛距離アップ専門コーチ
「ぶっ飛び力学」主宰。最先端のゴルフバイオメカニクスに基づき、科学的に飛距離を伸ばす方法を指導。平均飛距離+30ヤード。ドラコン日本チャンピオンや全米女子オープン出場プロをはじめ、多数のアマチュアを指導。キャリー230y→300y超。
プロフィールを詳しく見る →
← ブログ一覧へ戻る